私の父は会社経営者で、会社の工場や倉庫は全て会社の名義となっていることから、父の有する不動産は自宅のみです。100坪の自宅があるのは世田谷区の閑静な住宅街で、土地の評価額は1億円を上回るそうです。私は長女で、会社は長男である兄が継ぐ予定であることから、私は父から世田谷の自宅はあげる、いずれ同居してほしいと言われていました。しかし、夫の仕事の都合もあって横浜にある社宅で暮らし続けていました。子供が3人になって社宅が狭くなってきたところ、社宅の周辺で新築マンションの売り出しがありました。子供たちの学校の関係もあって横浜をまだ離れられないと父に相談すると、マンションの購入資金を援助してくれることになりました。父は住宅取得資金の贈与につき贈与税の特例が存在すると、知人から教えてもらったばかりだったようです。父の援助を非課税枠まで受けて、残りについては夫が住宅ローンを組むことでマイホームを手に入れました。しかし、その直後に父が倒れて入院し、そのまま死去してしまいました。相続税の申告手続を税理士に頼んだところ、父の自宅につき小規模宅地等の特例が適用されないとのことでした。もし、私たち夫婦が社宅で暮らし続けていたならば、土地の評価額が8割減額されたものの、マイホームを購入したために特例の適用を受けられないということでした。1億円の土地に対して相続税を準備していませんでしたので、仕方なく自宅の売却を決めたものの、残された大量の家財を処分する必要があり、また、申告期限までに売却できるかを考えると、不安でたまりません。父の存命中に検討しておくべきことが何かあったのでしょうか?

 

Q.
 私の父は会社経営者で、会社の工場や倉庫は全て会社の名義となっていることから、父の有する不動産は自宅のみです。100坪の自宅があるのは世田谷区の閑静な住宅街で、土地の評価額は1億円を上回るそうです。私は長女で、会社は長男である兄が継ぐ予定であることから、私は父から世田谷の自宅はあげる、いずれ同居してほしいと言われていました。しかし、夫の仕事の都合もあって横浜にある社宅で暮らし続けていました。
 子供が3人になって社宅が狭くなってきたところ、社宅の周辺で新築マンションの売り出しがありました。子供たちの学校の関係もあって横浜をまだ離れられないと父に相談すると、マンションの購入資金を援助してくれることになりました。父は住宅取得資金の贈与につき贈与税の特例が存在すると、知人から教えてもらったばかりだったようです。父の援助を非課税枠まで受けて、残りについては夫が住宅ローンを組むことでマイホームを手に入れました。しかし、その直後に父が倒れて入院し、そのまま死去してしまいました。相続税の申告手続を税理士に頼んだところ、父の自宅につき小規模宅地等の特例が適用されないとのことでした。もし、私たち夫婦が社宅で暮らし続けていたならば、土地の評価額が8割減額されたものの、マイホームを購入したために特例の適用を受けられないということでした。1億円の土地に対して相続税を準備していませんでしたので、仕方なく自宅の売却を決めたものの、残された大量の家財を処分する必要があり、また、申告期限までに売却できるかを考えると、不安でたまりません。父の存命中に検討しておくべきことが何かあったのでしょうか?

A.
 現金を出してもらわずに、家を購入してもらうことも検討しておく必要があったと思われます。また、誰も住む予定のない自宅に関しては、売却についても存命中に検討しておく必要がありました。

 日本では、相続税申告において、相続財産のうちに土地が占める割合は5割程度に上っていますので、土地をいかに相続するかが重要です。
 更地については、処分について大きく制限されることはありません。一方、居住していたり事業に使っていたりする土地などについては、生活のために欠かせない財産であることから、相続税を算出するに当たっても「小規模宅地等の特例」の適用を受けることが可能です。
 具体的には、被相続人の居住の用に供されていた土地であれば、330㎡までについて8割が減額されます。ただし、相続税の申告期限までに遺産分割が成立している必要があり、また、この特例が適用されて相続税が課されなくなる場合でも申告書を提出しなければならないといった、適用要件がいくつか存在します。
 特に相続人の要件が厳格で、そのマイホームの相続人によっては特例の適用を受けることができない場合がありますので、留意しなければなりません。例えば、マイホームを取得するのが配偶者であれば、無条件で特例が適用されます。一方、配偶者以外の者であれば、原則として、相続開始前より同居しており、かつ、相続開始後も申告期限(10カ月後)まで継続して居住していることが必要です。
 小規模宅地等の特例は、原則として、別居している者には適用されません。なぜなら、この特例は、配偶者や同居している親族といった、その土地を生活の基盤にしている者につき、相続税の負担を軽くする制度であるからです。ただし、借家に住んでいる者については将来的に実家に帰ってくる可能性があることを考慮し、別居である場合にも別居している子供(及びその配偶者)が「持ち家なし」であれば特例の適用を受けることができます。なお、特例の適用を受けることだけのために相続開始直前に借家に住む者が存在するため、「相続開始前3年以内に一回も持ち家を有したことがない」ことが要件となっています。したがって、父母の資産に余裕があるならば、住宅取得資金の贈与より、子供たちが居住するマンションの購入を父母名義で行うことも考えてみましょう。

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