私の夫は出身大学に思い入れがあり、自身の死去後に自身の財産のうち1,000万円をその大学に寄附するよう、私にしばしば話していました。遺産につき、その大学に寄附した残りの現金を長男と次男で2分の1ずつ分け、妻である私は自宅と有価証券を取得するようにとのことでした。専門家に相談し、その内容をまとめて遺言書を作成する準備をしていたところ、夫が重病であると判明し、遺言を書けないまま死去してしまいました。私は夫の遺志を尊重し、夫の死後まもなく香典や私の現金などから、500万円をその大学に寄附しました。残りの500万円は夫の預金から寄附するつもりでしたが、預金は凍結されて引き出せませんでした。そこで、子供たちに夫の遺志やそれまでの敬意を説明し、解約のための書類にハンコをもらおうとしました。しかし、子供たちはお嫁さんたちから反対されたこともあり、寄附に反対であると主張し、私が勝手に500万円を寄附したことについても怒り始めました。孫たちの教育費や将来の生活への不安により反対する気持ちも分かるものの、私は夫の遺志を尊重しようと子供たちに説得し続けました。そして、相続税の申告期限直前に、やっと合意を得ることができ、遺産分割協議がまとまった後に、子供たちは500万円を寄附してくれました。その後、相続税の申告手続が気にかかり、知人に相談しました。相続財産の額から寄附した額を差し引くと、相続税の基礎控除以下でしたので、相続税は課されないと考えていたのですが、非課税制度の適用を受けるためには申告しなければならないとその知人から教えてもらい、税理士に相談しました。税理士から、「最初に寄附した500万円については、領収書が遺産分割協議書の日付より前になっていますね。ご主人の死去により生命保険金の受領はないことから、香典やあなたの財産から寄附したものと思われます。残念ですが、相続で取得した財産からの寄附ではありませんので、非課税の特例は適用されません。後から寄附した500万円については、お子様が相続で取得した財産を申告期限までに寄附しているのは良いものの、証明書類を相続税申告書に添えなければ非課税となりません。この証明書は、申請後約1カ月~2カ月で発行されるといわれているため、申告期限に間に合わない可能性が高いです」と指摘され、私は驚きました。私は相続税の優遇措置を念頭に、寄附を行うよう子供たちを説得していたのですが、再度子供たちから非難されてしまいました。結局、どのようなことが原因で、このような事態に陥ってしまったのでしょうか?

 

Q.
私の夫は出身大学に思い入れがあり、自身の死去後に自身の財産のうち1,000万円をその大学に寄附するよう、私にしばしば話していました。遺産につき、その大学に寄附した残りの現金を長男と次男で2分の1ずつ分け、妻である私は自宅と有価証券を取得するようにとのことでした。
 専門家に相談し、その内容をまとめて遺言書を作成する準備をしていたところ、夫が重病であると判明し、遺言を書けないまま死去してしまいました。私は夫の遺志を尊重し、夫の死後まもなく香典や私の現金などから、500万円をその大学に寄附しました。残りの500万円は夫の預金から寄附するつもりでしたが、預金は凍結されて引き出せませんでした。そこで、子供たちに夫の遺志やそれまでの敬意を説明し、解約のための書類にハンコをもらおうとしました。しかし、子供たちはお嫁さんたちから反対されたこともあり、寄附に反対であると主張し、私が勝手に500万円を寄附したことについても怒り始めました。孫たちの教育費や将来の生活への不安により反対する気持ちも分かるものの、私は夫の遺志を尊重しようと子供たちに説得し続けました。そして、相続税の申告期限直前に、やっと合意を得ることができ、遺産分割協議がまとまった後に、子供たちは500万円を寄附してくれました。
 その後、相続税の申告手続が気にかかり、知人に相談しました。相続財産の額から寄附した額を差し引くと、相続税の基礎控除以下でしたので、相続税は課されないと考えていたのですが、非課税制度の適用を受けるためには申告しなければならないとその知人から教えてもらい、税理士に相談しました。税理士から、「最初に寄附した500万円については、領収書が遺産分割協議書の日付より前になっていますね。ご主人の死去により生命保険金の受領はないことから、香典やあなたの財産から寄附したものと思われます。残念ですが、相続で取得した財産からの寄附ではありませんので、非課税の特例は適用されません。後から寄附した500万円については、お子様が相続で取得した財産を申告期限までに寄附しているのは良いものの、証明書類を相続税申告書に添えなければ非課税となりません。この証明書は、申請後約1カ月~2カ月で発行されるといわれているため、申告期限に間に合わない可能性が高いです」と指摘され、私は驚きました。私は相続税の優遇措置を念頭に、寄附を行うよう子供たちを説得していたのですが、再度子供たちから非難されてしまいました。結局、どのようなことが原因で、このような事態に陥ってしまったのでしょうか?

A.
 非課税の特例の適用を受けるには、相続や遺贈により取得した財産を寄付しなければなりません。しかし、ご質問のケースでは、この条件を認識しておらず、遺産分割協議前に手元の香典収入やご質問者の金銭を寄附してしまいました。また、相続税の申告書に一定の証明書類を添えなければなりませんが、このことも知りませんでした。遺言が存在しなかったことから、遺産分割協議をしなければならず、子供たちを説得するのに時間を要しました。したがって、申告期限直前に寄附をすることとなり、申告期限までに証明書を準備することができませんでした。このようなことが問題であったと思われます。

 相続や遺贈で取得した財産を、国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合等には、その寄附を行った財産を相続税の対象外とするという特例が存在します。この特例の適用を受けるためには、次に掲げる全条件に該当しなければなりません。
○寄附を行った先が、「特定の公益法人」、すなわち国や地方公共団体又は教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人であること
 ※特定の公益法人の範囲は、社会福祉法人や独立行政法人などに限られ、寄附の時点で既に設立されているものである必要があります。
○寄附を行った財産が、相続や遺贈で取得した財産であること
 ※相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
○相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること
 ご質問のケースにおいては、遺産分割協議成立前に寄附を行っていますので、形式上でも相続や遺贈で取得した財産を寄附したとは考えられません。香典として得た金銭や寄附する被相続人以外の資産を寄附した場合、特例は適用されませんので、留意しなければなりません。
 なお、配偶者が相続で取得した現金以外の財産(有価証券等)を換価処分し、その金銭を寄附した場合にも、その財産は非課税にはなりません。
 寄附した財産の明細書(相続税の申告書の第14表)や一定の証明書類を、相続税の申告書に添える必要があります。ご質問のケースでは、夫の出身大学が文部科学省に申請を行い、「相続税非課税対象法人の証明書」を発行してもらわなければなりません。この発行には、申請後約1カ月~2カ月を要するといわれています。
 被相続人が遺言によって寄附した財産についても、一定の条件に該当する場合には、非課税とされます。トラブル防止のためには、財産の分け方が決定したら、早期に公正証書遺言を作成するといいでしょう。

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