約10年前に父が死去した際に、私たち兄弟3人と母で遺産分割をしました。家族の仲が良かったことから、財産を皆で平等に分けることに決めました。多くの不動産があったことなどから、誰がどの不動産を取得するのかを決めるのが容易ではなさそうでした。その当時、弁護士の無料相談を受け、家族仲が良いなら「共有」で取得するといいと思うと言われましたので、不動産全てを、兄弟各6分の1、母2分の1として共有で相続しました。不動産の実勢価額は路線価を基準とした相続税評価額との乖離が大きい場合も少なくありません。また、収益性も各々異なっていましたので、共有で取得することで平等に相続でき、家族皆に不満はありませんでした。しかし、時間が経つにつれて家族の経済状況が変化し、ある時次男である弟が「子供の海外留学のためにまとまった資金が要るので、不動産の一部を売却したい」と主張しました。その不動産は収益性が良く、次男以外の者は売却したくなかったものの、次男の持分を私たちが買い取ることも容易ではなく、家族全員で売ることとなりました。また、不動産は老朽化により大規模修繕にかなりの費用を要します。共有物件については共有者が共有持分に従ってその費用を負担しますが、次男はその負担ができないため、母が現在は立て替え払いを行っています。最近、母の物忘れが激しくなり、認知症ではないかと思うこともしばしばあります。認知症になると不動産の売却行為は不可能となりますので、母が不動産全ての共有持分を有する現状においては、以後第三者に売ることも難しくなってくる可能性が高いと思われます。共有での相続については評価額は平等となりますが、現在では不便さを感じることが多くなってきましたので、安易に共有にすべきではなかったのでしょうか?
Q.
約10年前に父が死去した際に、私たち兄弟3人と母で遺産分割をしました。家族の仲が良かったことから、財産を皆で平等に分けることに決めました。多くの不動産があったことなどから、誰がどの不動産を取得するのかを決めるのが容易ではなさそうでした。その当時、弁護士の無料相談を受け、家族仲が良いなら「共有」で取得するといいと思うと言われましたので、不動産全てを、兄弟各6分の1、母2分の1として共有で相続しました。不動産の実勢価額は路線価を基準とした相続税評価額との乖離が大きい場合も少なくありません。また、収益性も各々異なっていましたので、共有で取得することで平等に相続でき、家族皆に不満はありませんでした。
しかし、時間が経つにつれて家族の経済状況が変化し、ある時次男である弟が「子供の海外留学のためにまとまった資金が要るので、不動産の一部を売却したい」と主張しました。その不動産は収益性が良く、次男以外の者は売却したくなかったものの、次男の持分を私たちが買い取ることも容易ではなく、家族全員で売ることとなりました。また、不動産は老朽化により大規模修繕にかなりの費用を要します。共有物件については共有者が共有持分に従ってその費用を負担しますが、次男はその負担ができないため、母が現在は立て替え払いを行っています。最近、母の物忘れが激しくなり、認知症ではないかと思うこともしばしばあります。認知症になると不動産の売却行為は不可能となりますので、母が不動産全ての共有持分を有する現状においては、以後第三者に売ることも難しくなってくる可能性が高いと思われます。共有での相続については評価額は平等となりますが、現在では不便さを感じることが多くなってきましたので、安易に共有にすべきではなかったのでしょうか?
A.
共有にすると評価額は平等になるものの、不動産の全てを売却するためには全員の同意が必要であり、反対する者が1人でもいれば売却できません。自分の持分のみを売却することは可能ですが、買い手を見つけるのは容易ではありません。また、大規模修繕をした場合には、持分に応じて各自が費用を負担することとなり、支出できない共有者がいれば、誰かが立て替えなければなりません。
ご質問のケースにおいては、平等な相続を意識したために、一次相続で不動産を容易に共有取得したことが問題です。親子間における共有であれば、次の相続で親の持分を取得することで単有名義にすることが可能です。しかし、兄弟間における共有についてはそのようにはいきません。将来的に兄弟の相続等で、次第に関係者が増加することから、早期に対応する必要があります。
共有の解消方法として、次のものが存在し、いずれの方法についても共有者全員の同意を要します。
1.全員による第三者への売却
2.共有物分割
3.等価交換
不動産の一族外への流出を防ぎたい場合には、上記のうち1又は2を検討することとなります。しかし、上記2は土地の地形等の関係で実際には困難なケースも少なくありません。その場合には、条件に該当すれば譲渡税が課されないよう上記3の検討を行います。ただし、流通税(登録免許税、不動産取得税)は負担することとなりますので、検証を慎重に行うべきでしょう。