私の夫は自宅の他にも複数の不動産を有しており、それらのうち空き地であった土地に私名義でアパートを建築しました。建築費用は自己資金以外は借入金で賄いましたので、借入残高があります。夫婦間のことですので、土地は無償で使わせてもらうことにしました。私はアパートの家賃収入を得られるようになり、不動産所得を毎年確定申告しています。夫が先日死去しましたので、夫の相続税申告については税理士にお願いしたところ、アパートの敷地については貸家建付地の減額がなく、更地と同額の評価額(1億円)であることを税理士から聞きました。私が所有するアパートの固定資産税評価額は2,000万円で、借入金残高は3,500万円です。アパートの敷地については貸家建付地の減額があるので相続税の負担が小さくなるという話をかつて人から聞いたことがありますが、税理士によると、アパートの名義は私、土地の名義は夫であり、土地を無償で私が使っているために、貸家建付地の減額はないとのことでした。夫名義でアパートを建築しておけば良かったのでしょうか?

 

Q.
私の夫は自宅の他にも複数の不動産を有しており、それらのうち空き地であった土地に私名義でアパートを建築しました。建築費用は自己資金以外は借入金で賄いましたので、借入残高があります。夫婦間のことですので、土地は無償で使わせてもらうことにしました。私はアパートの家賃収入を得られるようになり、不動産所得を毎年確定申告しています。
夫が先日死去しましたので、夫の相続税申告については税理士にお願いしたところ、アパートの敷地については貸家建付地の減額がなく、更地と同額の評価額(1億円)であることを税理士から聞きました。私が所有するアパートの固定資産税評価額は2,000万円で、借入金残高は3,500万円です。アパートの敷地については貸家建付地の減額があるので相続税の負担が小さくなるという話をかつて人から聞いたことがありますが、税理士によると、アパートの名義は私、土地の名義は夫であり、土地を無償で私が使っているために、貸家建付地の減額はないとのことでした。夫名義でアパートを建築しておけば良かったのでしょうか?

A.
 相続税の計算に際しては、土地の評価は、路線価方式又は倍率方式で行います。アパート敷地や貸地など、賃貸している場合、評価額が減額されます。土地の評価については、次のとおりです。
○自宅・別荘地…自用地価額(100%評価)
○アパートや貸店舗などの敷地(貸家建付地)…自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合)
○貸地…自用地価額×(1-借地権割合)
 このように土地の用途によって評価が異なり、貸地の評価額が最も低くなります。地代は低く設定れているケースが多く、土地の上に他人の建物が建っていますので、土地の利用価値が低いことが相続税評価額にも反映されているものと思われます。また、使用貸借については、親族間などで無償で貸し借りすることから、相続税評価は借地人の権利を考慮することなく、自用地評価となります。
 そして、相続税を計算する際には、財産を計上するだけではく、死去した者の債務や葬式費用を相続人が負担した場合、その金額を控除できます。例えば、債務については、死去した者が不動産貸付業を営んでいたケースでは、未払いの固定資産税・所得税や、賃貸物件に係る借入金、預かり敷金・保証金などが考えられます。
 ご質問のケースでは、アパートの所有者が妻であるご質問者ですので、夫の相続税を計算するに当たっては、アパートの借入金や敷金を控除することができず、土地の評価額が1億円ですので、相続税の課税対象である夫の相続財産は1億円ということになります。
 仮に、土地とアパートのいずれも夫名義であったとしたら(借地権割合0.7、借家権割合0.3と仮定します)、土地の評価額が1億円×(1-0.7×0.3)=7,900万円、アパートについては2,000万円×(1-0.3)=1,400万円となり、借入金3,500万円を控除できます。したがって、相続税の課税対象である夫の相続財産は5,800億円ということになります。
 アパートを経営する場合、不動産管理会社を活用することがあります。例えば、夫が土地と建物を有している場合に、妻や子供が出資して不動産管理会社を設立し、その役員となります。この不動産管理会社には、例えば次のような方式のものがあります。
○サブリース方式(会社が夫から物件を一括借り上げして、テナントに転貸する方式)
○管理委託方式(会社が物件の維持・管理を行い、夫から手数料を受け取る方式)
 会社は手数料収入又は家賃収入を得ることができ、そこから妻や子供に役員報酬を支給することも可能です。ご質問のケースにおいては、建物を妻であるご質問者所有としてご質問者が家賃収入を得ていますが、不動産管理会社を活用してご質問者が会社から給与を受け取る方法にするという選択肢もあったと思われます。

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