10年前に父が死去し、母が土地を相続し、長男である私は建物を相続しました。その際に、土地を無料で借りるのは申し訳ないと思い、私は付近相場の通常の地代を払うこととしました。以後10年間、私は不動産所得の申告において母に対して支払った地代を経費に計上し、母はその地代収入として不動産所得の申告を行ってきました。このたび、母が死去し、税理士に相続税の申告書作成をお願いしました。でき上がってきたものを確認したところ、私が所有する建物の建っている土地は路線価が高く、相当高額な更地評価額となりましたので、相続税も相当な高額で申告書を提出して納めました。その後、何となく納得できなかったことから古くからの友人に相談したところ、資産税に詳しい税理士がいて無料で相談に乗ってくれるとのことでした。その税理士にすぐに相談したところ、次のようなことが分かりました。親族間においても借地権が存在することはあり、特に私については、地代を払う私もそれを受領する母も確定申告していますので、両者が税務署に提出していて裏腹の関係にあります。この場合、本来なら10年前に借地権が母から私に贈与されたと認定されて贈与税課税が発生していたものの、現在では時効により相続税は課されません。したがって、その土地については更地価額から借地権を控除した底地が相続財産となることから、母の相続財産は底地価額での申告でよかったということになります。直ちにその税理士にお願いして更正の請求を行い、税金が還付されました。地代収受がある場合、相続税において、使用貸借とされるケースと賃貸借とされるケースに、どのような違いがあるのですか?
Q.
10年前に父が死去し、母が土地を相続し、長男である私は建物を相続しました。その際に、土地を無料で借りるのは申し訳ないと思い、私は付近相場の通常の地代を払うこととしました。以後10年間、私は不動産所得の申告において母に対して支払った地代を経費に計上し、母はその地代収入として不動産所得の申告を行ってきました。
このたび、母が死去し、税理士に相続税の申告書作成をお願いしました。でき上がってきたものを確認したところ、私が所有する建物の建っている土地は路線価が高く、相当高額な更地評価額となりましたので、相続税も相当な高額で申告書を提出して納めました。その後、何となく納得できなかったことから古くからの友人に相談したところ、資産税に詳しい税理士がいて無料で相談に乗ってくれるとのことでした。その税理士にすぐに相談したところ、次のようなことが分かりました。親族間においても借地権が存在することはあり、特に私については、地代を払う私もそれを受領する母も確定申告していますので、両者が税務署に提出していて裏腹の関係にあります。この場合、本来なら10年前に借地権が母から私に贈与されたと認定されて贈与税課税が発生していたものの、現在では時効により相続税は課されません。したがって、その土地については更地価額から借地権を控除した底地が相続財産となることから、母の相続財産は底地価額での申告でよかったということになります。直ちにその税理士にお願いして更正の請求を行い、税金が還付されました。地代収受がある場合、相続税において、使用貸借とされるケースと賃貸借とされるケースに、どのような違いがあるのですか?
A.
親子間における土地の貸し借りは、地代収受がないことから、一般的には使用貸借であると解されています。しかし、親子間でも地代収受が存在するケースもたまにあり、この場合、その金額にもよるものの、借地権が存在することもあります。
他人である第三者と土地の貸し借りを行った場合にのみ借地権が発生するのであって、親子等の親族間においては使用貸借しかないと思っている人も少なくありません。しかし、実際には、建物所有者と土地所有者の賃借の実態が賃貸借である場合には、親子間においても借地権は発生します。
相続税における使用貸借と賃貸借の違いについては、相続税の個別通達中に「使用貸借に係る土地のついての相続税及び贈与税の取扱いについて」という項目が存在します。そして、土地の借受者と所有者の間にその土地の固定資産税等相当する金額以下の地代収受がある場合は使用貸借とされる旨が記載されています。したがって、固定資産税等の2倍~3倍を払うと賃貸借となります。
ご質問のケースの類似例として、次のようなものが挙げられます。
親子間での賃貸借が、他人間での賃貸借では通常あり得ない条件及び内容等によりなされた事実があっても、そのことから直ちにその賃貸借契約の成立が否定されるものではないとして借地権の存在が認められました(平成8年6月24日裁決)。
また、被相続人とその子供の間における土地の使用貸借契約は、宅地転用前に解除されており、以後の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存在するものとされました(平成15年5月19日裁決)。
そして、使用貸借か賃貸借かの差は地代の支払いがあるかどうかで判断され、賃貸借契約書がなく地代の算定根拠が明確でないことをもって、直ちに本件宅地の使用関係が無償による使用貸借であるとする論拠とはならないとして借地権が認められました(昭和49年7月30日裁決)。