一昨年の10月に私の父が85歳で死去しました。相続人は私と弟、妹の3人です。調べたところ、公正証書遺言を残しており、そればA宅地を長男である私に遺贈するという内容でしたが、もう一つのB宅地については記載がなく、未分割の状態でした。A宅地は私のクリニックの敷地、B宅地はアパートの宅地となっています。相続財産の評価はA宅地が最も高く、弟と妹は遺産分けでもめており、現在調停中です。遺産分割の話し合いの途中であるものの、申告期限が迫っています。A宅地につき特定事業用宅地の減額の適用を受けるのが最も高額になることから、弟や妹と利害が一致していると思い、2人の同意を得ずにこのA宅地につき小規模宅地等の特例を適用した相続税申告書を税務署に提出しました。その1年後に税務調査があり、税務署から「相続人全員の同意がありませんので、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません」と指摘されました。納得できませんでしたので、「修正申告は行いません」と主張すると、その特例の適用を否認する更正処分を受けてしまいましたが、私はどうすれば良かったのでしょうか?

 

Q.
 一昨年の10月に私の父が85歳で死去しました。相続人は私と弟、妹の3人です。調べたところ、公正証書遺言を残しており、そればA宅地を長男である私に遺贈するという内容でしたが、もう一つのB宅地については記載がなく、未分割の状態でした。A宅地は私のクリニックの敷地、B宅地はアパートの宅地となっています。相続財産の評価はA宅地が最も高く、弟と妹は遺産分けでもめており、現在調停中です。遺産分割の話し合いの途中であるものの、申告期限が迫っています。A宅地につき特定事業用宅地の減額の適用を受けるのが最も高額になることから、弟や妹と利害が一致していると思い、2人の同意を得ずにこのA宅地につき小規模宅地等の特例を適用した相続税申告書を税務署に提出しました。
 その1年後に税務調査があり、税務署から「相続人全員の同意がありませんので、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません」と指摘されました。納得できませんでしたので、「修正申告は行いません」と主張すると、その特例の適用を否認する更正処分を受けてしまいましたが、私はどうすれば良かったのでしょうか?

A.
 ご質問のケースでは、遺言が中途半端で、遺産分割の話し合いの途中で申告期限が到来してしまいました。小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、次のいずれかの方法を選択すれば良かったと思われます。
○A宅地を未分割財産ということにし、「3年以内の分割見込書」を提出する。原則として3年以内に遺産分割終了後に更正の請求によって小規模宅地等の特例の適用を受ける。
○税務調査後、更正処分を受ける前に、修正申告書及び「3年以内の分割見込書」を自主的に提出する。原則として3年以内に遺産分割終了後に更正の請求によって小規模宅地等の特例の適用を受ける。

 小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続で誰が取得するかが決まっていることと、どの宅地からいかなる面積につき適用を受けるかに関して合意できていることが必要です。
 前者については例えば、遺産分割協議によって取得したり、遺言において誰に相続させるかを記載しておいてもらうということです。
 後者については、特例の適用対象地が複数存在した場合、その複数の土地を相続取得した相続人と話し合い、どの宅地からいかなる面積につき適用を受けるのかに関して合意しておかなければならないということです。例えば、X宅地(特定居住用対象地)、Y宅地(特定事業用対象地)、Z宅地(貸付用対象地)の三つが適用対象地であり、長男がX宅地を取得し、弟の1人がY宅地、もう1人の弟がZ宅地を相続した場合、どの宅地から3人でいかなる面積につき適用を受けるかに関して合意する必要があります。
 ご質問のケースでは、A宅地もB宅地も適用対象地でした。A宅地については長男が取得することが遺言で決まっていますが、B宅地については遺言がなかったことから、基本的には相続人が話し合って誰が取得するのかを決めなければなりません。決まるまでは全ての相続人の共有であることから、長男は迅速に他の相続人と話し合ってB宅地を誰が相続するかを遺産分割協議で決める必要があります。そして、A宅地とB宅地のどちらからいかなる面積につき特例の適用を受けるかに関して、全相続人の合意が必要でした。

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