夫が一昨年に死去し、相続人は私と長男です。夫は上場企業の社長を務めるほどの仕事人間で、お金は夫が管理していたものの生活費を毎月もらって暮らしていました。生活費には余裕があり、全く不自由のない暮らしができました。そして、夫の残した財産のおかげで今後の老後について心配することなく安心しています。夫は遺言書を残してくれましたので、私と長男は遺産分割の話し合いを特段することなく、相続することができ、夫に感謝しています。相続税の申告と納税を終えて安堵していました。しかし、後に税務署から夫の相続税の調査に関する連絡を受けました。私名義の通帳に多額の預金があることについて、どのように蓄えたのかを問われ、「夫からもらった生活費を節約して蓄えました」と言いました。夫婦のお金であり、契約書を作成したり、贈与税を申告したりしなくても、当然に私のものであると思っていました。しかし、生活費から蓄えた私名義の預金につき、税務署から名義預金であると指摘され、相続税の修正申告をすることとなってしまいました。どうすれば、名義預金という指摘を受けずに済んだのでしょうか?

 

Q.
夫が一昨年に死去し、相続人は私と長男です。夫は上場企業の社長を務めるほどの仕事人間で、お金は夫が管理していたものの生活費を毎月もらって暮らしていました。生活費には余裕があり、全く不自由のない暮らしができました。そして、夫の残した財産のおかげで今後の老後について心配することなく安心しています。夫は遺言書を残してくれましたので、私と長男は遺産分割の話し合いを特段することなく、相続することができ、夫に感謝しています。相続税の申告と納税を終えて安堵していました。
 しかし、後に税務署から夫の相続税の調査に関する連絡を受けました。私名義の通帳に多額の預金があることについて、どのように蓄えたのかを問われ、「夫からもらった生活費を節約して蓄えました」と言いました。夫婦のお金であり、契約書を作成したり、贈与税を申告したりしなくても、当然に私のものであると思っていました。しかし、生活費から蓄えた私名義の預金につき、税務署から名義預金であると指摘され、相続税の修正申告をすることとなってしまいました。どうすれば、名義預金という指摘を受けずに済んだのでしょうか?

A.
 次のような具体的な事実に基づいて、その預金の真の所有者は誰なのかが判断されます。
○資金の原資
○実際の管理や支配、運営の状況  など
 上記のうち、資金の原資というのは、誰が稼いだお金であるのかということです。無職無収入であれば財産を築くことは不可能ですので、稼いだ者がその預金の所有者となります。専業主婦は、贈与や相続によって財産をもらうことの他に、自らの財産を有することはありません。このような考え方は一般的な家庭内の常識とは違うかもしれませんが、税務上は基本的にこのように考えられています。
 そして、実際の管理や支配、運営の状況というのは、実際に誰が通帳、印鑑、カードなどを有し、自由に預金を入出金したり、使用していたりしていたのかということです。財産を管理する者と支配する者は同じであるのが一般的です。ただし、夫婦については管理するのは妻で、支配するのは夫というように、同じでない場合が多いようです。支配している者というのは、大きな支出の権限を有している者のことです。平日の昼間には夫は仕事をしているために、銀行の窓口に出向く時間を割くことができず、専業主婦やパート勤務の妻が夫の通帳や印鑑を有していて、銀行に出向いて生活費の入出金を行うというケースは、多く見受けられます。このような場合には、家族が生活するためのお金を妻が夫から預かって、管理しているにすぎないということになります。そのお金を自由に使用していても、支配しているとはいえません。夫から包括的な同意を得て、「その家のお金」につき、それらの行為をしているにすぎないと思われます。
 そのお金の真の所有者は、上記の二つの事実のどちらにも該当する者、すなわち、お金を稼いで、大きな支出の権限を有している夫であるといえます。
 民法における贈与については、同法第549条で「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。すなわち、贈与者による贈与の意思表示と受贈者による受贈の意思表示が合致して成立する契約行為であることが、特徴となっています。配偶者名義で預金を行い、長い間経っていても、民法における贈与がなされていなければ、相続財産に計上されます。
 ご質問のケースのように、妻名義又は別の者の名義となっている預金が被相続人の名義預金であるとの指摘を受けないよう、毎回、贈与契約書を作成することが重要です。そして、妻が積極的に通帳を活用するといいと思われます。贈与契約書が存在せず、かつ、貯まったお金が使われずに通帳に入ったままになっていれば、名義預金であるとの指摘を受ける可能性が高くなってしまいます。

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