私の父には2人の子供と3人の孫がおり、父はアパートを経営する資産家でした。私は相続税の支払いができるか不安で、かつ、生活も楽ではありませんでしたので、父に何度も生前贈与をお願いしていました。しかし、父は「お金を渡せば無駄遣いすると思うし、若いのだから懸命に仕事をして苦労することが大切だ」と繰り返すばかりでした。後に父が死去し、通帳を確認すると、10年前より残高が5,000万円も減少していました。父の貸金庫を確認し、10年前より年に1度、子供と孫名義の通帳に、贈与税の基礎控除以下で定額貯金を積み立てていたことが分かりました。父の態度は冷たかったものの、私たちが納税資金に困ることの無いよう、私たち名義の通帳に貯蓄をしてくれていたのです。この子供と孫名義の通帳は父名義ではないことから、父の相続財産として計上することなく、相続税を申告しました。生前贈与を行ってくれたために相続税の負担が小さくなり、私たちは父に感謝しました。しかしながら、その後の税務調査で、子供と孫名義の預金が名義預金であるとの指摘を受け、追加で相続税を支払うことになってしまいました。子供と孫名義の通帳にお金を移しただけでは、贈与をしたことにはならないのですか?

 

Q.
 私の父には2人の子供と3人の孫がおり、父はアパートを経営する資産家でした。私は相続税の支払いができるか不安で、かつ、生活も楽ではありませんでしたので、父に何度も生前贈与をお願いしていました。しかし、父は「お金を渡せば無駄遣いすると思うし、若いのだから懸命に仕事をして苦労することが大切だ」と繰り返すばかりでした。
 後に父が死去し、通帳を確認すると、10年前より残高が5,000万円も減少していました。父の貸金庫を確認し、10年前より年に1度、子供と孫名義の通帳に、贈与税の基礎控除以下で定額貯金を積み立てていたことが分かりました。父の態度は冷たかったものの、私たちが納税資金に困ることの無いよう、私たち名義の通帳に貯蓄をしてくれていたのです。この子供と孫名義の通帳は父名義ではないことから、父の相続財産として計上することなく、相続税を申告しました。生前贈与を行ってくれたために相続税の負担が小さくなり、私たちは父に感謝しました。しかしながら、その後の税務調査で、子供と孫名義の預金が名義預金であるとの指摘を受け、追加で相続税を支払うことになってしまいました。子供と孫名義の通帳にお金を移しただけでは、贈与をしたことにはならないのですか?

A.
 単に子供と孫名義の通帳にお金を移しただけでは贈与をしたことにはならず、贈与の実態があって初めて年間110万円まで非課税で財産を移転できます。適切に財産を贈与された場合、通常なら受贈者は自分のものとしてその資産を使用収益し、また、管理・支配・運用します。その状態でない場合には、贈与の事実が認められず、名義預金と認定されて相続税が課される可能性が高いでしょう。ご質問のケースにおいては、贈与の実態がないと税務調査で指摘を受け、名義預金と認定されてしまいました。
 では、どうすれば贈与の事実を認めてもらうことができるのでしょうか。ポイントは次の四つです。
○贈与契約書を作成することです。その契約書に、贈与者と受贈者が各々署名・捺印しなければなりません。さらに、公証役場で確定日付をとっておけば万全です。
○贈与口座を作る際に、子供と孫たちは自らの印鑑で通帳を作ることです。
○贈与税の申告及び納税を行うことです。贈与の金額を110万円以下とせずに、それより少し多く贈与して申告及び納税を行えば、贈与の証拠を残すことができますので、この方法も選択肢の一つです。
○子供と孫たちが、通帳と印鑑を自分自身で管理・保管することです。そして、自らの財産として積極的に通帳を活用することが重要です。契約書や申告書などがきちんと整っていても、子供や孫たちが実質的に通帳の管理や支払いをしていない場合には、贈与の事実が認められないこともあります。通帳の入出金の記録によって、親が子供たちに渡さずに自らのタンスの引き出しに保管していたということは分かってしまいます。贈与されたお金に係る通帳は、子供に渡してしっかりと管理させるべきです。受贈者が管理している事実を明らかにするためには、贈与専用の口座に貯蓄するのではなく、受贈者が通常使っている口座に振り込むことが望ましいといえます。
 名義預金が存在するのであれば、税務調査で残された家族が困ることのないよう、相続開始前に真実の所有者にいったん戻してから、適切に贈与をするのが良いと思われます。

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