父が死去し、相続人は母と私と妹の3人です。母は父の預金に頼っていましたので、相続によって預金の凍結が行われると生活に困窮してしまいます。そこで、直ちに遺産分割について話し合ったところ、母は「自分は最低限生活できれば構わない」と話し、私たちにも相続するように言ってくれました。そして、二次相続の相続税を考えたら母が取得しないのが得策だとも聞きました。しかし、母の年齢を考えたらまだお金を使うだろうし、病気のときや施設への入居時など、いざというときにはお金が要ります。また、第一に、父が存命中に父と母の2人で作った財産ですので、母には金銭的に余裕を持って残りの人生を楽しんでもらいたいと思いましたので、父の全財産を母に相続してもらうということで、妹とも同意に至りました。私と妹が相続しないためには相続放棄するのが簡単ではないかと考え、インターネットで調べました。すると、相続開始を知った日より3カ月以内に家庭裁判所に放棄を申し述べる必要があるとの記載がありましたので、妹と共に急いで家庭裁判所に相続放棄の申述をしました。しかし、その後、父から母へ預金の名義変更手続に出向いた際に、戸籍謄本等を見た行員さんに「お2人は相続放棄されていて、お父様のご両親も亡くなられていることから、お父様の兄弟の方々が相続人となります。そのため、お母様とご兄弟全員の署名・捺印のある遺産分割協議書をご用意いただく必要があります」と指摘され、驚きました。父は4人兄弟の長男で、弟2人、妹1人がいます。そのうち弟1人は既に死去していたことから、その子(父から見て甥姪の3人)が相続人の立場を引き継いで代襲相続人となり、母以外に5人(父から見て弟1人、妹1人、甥姪3人)が父の相続人となってしまったのです。しかも、代襲相続人のうちの1人は行方不明で連絡がつきません。父の全財産を母に相続してもらうためには、さらに相続放棄をしてもらうか、兄弟等と遺産分割協議を行って協議書に署名・捺印してもらう必要があります。しかし、連絡がつかない相続人がいますし、権利を主張されるのではないかと思うと、交渉する決心ができません。遺産の名義変更が滞っており、困惑しています。父の全財産を母に相続してもらうためには、どうすべきだったのでしょうか?

 

Q.
 父が死去し、相続人は母と私と妹の3人です。母は父の預金に頼っていましたので、相続によって預金の凍結が行われると生活に困窮してしまいます。そこで、直ちに遺産分割について話し合ったところ、母は「自分は最低限生活できれば構わない」と話し、私たちにも相続するように言ってくれました。そして、二次相続の相続税を考えたら母が取得しないのが得策だとも聞きました。しかし、母の年齢を考えたらまだお金を使うだろうし、病気のときや施設への入居時など、いざというときにはお金が要ります。また、第一に、父が存命中に父と母の2人で作った財産ですので、母には金銭的に余裕を持って残りの人生を楽しんでもらいたいと思いましたので、父の全財産を母に相続してもらうということで、妹とも同意に至りました。私と妹が相続しないためには相続放棄するのが簡単ではないかと考え、インターネットで調べました。すると、相続開始を知った日より3カ月以内に家庭裁判所に放棄を申し述べる必要があるとの記載がありましたので、妹と共に急いで家庭裁判所に相続放棄の申述をしました。
 しかし、その後、父から母へ預金の名義変更手続に出向いた際に、戸籍謄本等を見た行員さんに「お2人は相続放棄されていて、お父様のご両親も亡くなられていることから、お父様の兄弟の方々が相続人となります。そのため、お母様とご兄弟全員の署名・捺印のある遺産分割協議書をご用意いただく必要があります」と指摘され、驚きました。父は4人兄弟の長男で、弟2人、妹1人がいます。そのうち弟1人は既に死去していたことから、その子(父から見て甥姪の3人)が相続人の立場を引き継いで代襲相続人となり、母以外に5人(父から見て弟1人、妹1人、甥姪3人)が父の相続人となってしまったのです。しかも、代襲相続人のうちの1人は行方不明で連絡がつきません。父の全財産を母に相続してもらうためには、さらに相続放棄をしてもらうか、兄弟等と遺産分割協議を行って協議書に署名・捺印してもらう必要があります。しかし、連絡がつかない相続人がいますし、権利を主張されるのではないかと思うと、交渉する決心ができません。遺産の名義変更が滞っており、困惑しています。父の全財産を母に相続してもらうためには、どうすべきだったのでしょうか?

A.
 民法上、相続人の順位が定められています。相続順位は、第一に、配偶者がいる場合にはその配偶者は必ず相続人となります。そして、配偶者と共に、第一順位は子、第二順位は直系尊属(父母等)、第三順位は兄弟とされています。配偶者がいない場合には、第一順位は子だけ、第二順位は直系尊属のみ、第三順位は兄弟のみの順位となります。そして、先の順位の相続人全てが相続放棄した場合には、次の順位者が相続人となります。
 ご質問のケースにおいては、第一順位の子(ご質問者と妹)の全員が相続放棄し、第二順位の直系尊属(父から見て父母等)は既に死去していますので、第三順位の兄弟(兄弟が死去している場合、その子)が相続人となります。したがって、父から見て兄弟と甥姪に事情を伝えて相続放棄してもらうか、兄弟等に頼んで遺産分割協議書に母が父の全財産を相続するという内容で署名・捺印をもらう必要があり、手間や時間を要するだけでなく、関係性によっては相続する権利があるという主張をされる可能性もあります。なお、兄弟と甥姪に相続放棄してもらう場合には、父の死去時より3カ月以内ではなく、自分が相続人となったことを知った日より3カ月以内に手続を行わなければなりませんので、その日は少なくともご質問者と妹の相続放棄以後ということになります。
 通常、被相続人に多額の債務が存在する場合や、それを把握し切れない場合に、やむを得ず家庭裁判所に相続放棄を申し述べます。そのため、そのような場合以外は、その順位の全相続人が相続放棄を行ってしまえば、上記のように最初から相続人でなかったものとみなされますので、次の順位の相続人が相続人となります。
 したがって、相続人が財産をもらうことを回避するためには、相続人としての地位を保ちつつ、遺産分割協議書に、財産の分配を辞退する内容で署名・捺印を行うといいでしょう。

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