私の兄は独身でしたが、5月末に死去しました。父は3年前に死去しており、母は80歳ですが元気に実家で一人暮らしをしています。兄の相続人は母のみと考えていましたが、8月のお盆休みに親戚の集まりで、いとこが、兄の相続後3カ月以内に母が相続放棄をすると、私の相続税は通常の2割増しになるものの、私が相続人となり、兄の財産を承継できると話していました。しかし、相続放棄の手続期限まで約10日しかなく焦っており、また、相続税が2割増しになるとのことでしたので、相続放棄はせずに兄の全財産を母が相続することとしました。ところが、後の試算で、母の相続時に私に課される相続税は、この2割増しの相続税を大きく上回ることが分かりました。両親ともに代々地主の家系であり、父の相続時にはほとんどが不動産でしたが、母固有の財産も多いので二次相続を考慮して財産のほとんどは兄弟で相続することとしました。ただし、兄は独身ですので以後結婚しない限り、母の死去後は兄の財産はいずれ私か、私が先に死去していれば私の子供に承継されると分かっていたため、兄もそれを理解して兄が3分の1、私が3分の2の財産を相続しました。母はほとんど相続しませんでしたので配偶者の税額軽減を用いず、相続税はかなり高額となりましたが、その際にかき集めた現金と相続税を分割払いする延納制度を用い、現在でも高額な相続税を納め続けています。しかしながら、今回の兄の相続によって、母が兄の全財産を相続することとなり、不動産をメインとする多額の母の財産に兄の財産が加わりました。母の年齢を考えても可能な対策は多くありませんし、母は現在、元気ですが、母の相続税を私が負担しなければならなくなる時期は、ずっと先というわけではないでしょう。その相続税を納付できる自信はありません。やはり相続放棄をすべきだったのでしょうか?

 

Q.
 私の兄は独身でしたが、5月末に死去しました。父は3年前に死去しており、母は80歳ですが元気に実家で一人暮らしをしています。兄の相続人は母のみと考えていましたが、8月のお盆休みに親戚の集まりで、いとこが、兄の相続後3カ月以内に母が相続放棄をすると、私の相続税は通常の2割増しになるものの、私が相続人となり、兄の財産を承継できると話していました。しかし、相続放棄の手続期限まで約10日しかなく焦っており、また、相続税が2割増しになるとのことでしたので、相続放棄はせずに兄の全財産を母が相続することとしました。
 ところが、後の試算で、母の相続時に私に課される相続税は、この2割増しの相続税を大きく上回ることが分かりました。両親ともに代々地主の家系であり、父の相続時にはほとんどが不動産でしたが、母固有の財産も多いので二次相続を考慮して財産のほとんどは兄弟で相続することとしました。ただし、兄は独身ですので以後結婚しない限り、母の死去後は兄の財産はいずれ私か、私が先に死去していれば私の子供に承継されると分かっていたため、兄もそれを理解して兄が3分の1、私が3分の2の財産を相続しました。母はほとんど相続しませんでしたので配偶者の税額軽減を用いず、相続税はかなり高額となりましたが、その際にかき集めた現金と相続税を分割払いする延納制度を用い、現在でも高額な相続税を納め続けています。しかしながら、今回の兄の相続によって、母が兄の全財産を相続することとなり、不動産をメインとする多額の母の財産に兄の財産が加わりました。母の年齢を考えても可能な対策は多くありませんし、母は現在、元気ですが、母の相続税を私が負担しなければならなくなる時期は、ずっと先というわけではないでしょう。その相続税を納付できる自信はありません。やはり相続放棄をすべきだったのでしょうか?

A.
 民法上、相続人の順位が定められており、被相続人に子供がいない場合、次の順位の相続人はご質問のケースのように親が存命であれば親とされています。この際に被相続人が相続税が課される程度の財産を有していれば、第一に親に相続税が課され、第二にその親に相続が発生すれば、その子供(被相続人の兄弟)が財産を相続することになります。すなわち、通常、短期間において同一財産に2回も相続税が課されることになります。また、親が資産家で多額の財産を有している場合には、10%~55%の超過累進税率によって、相続税の負担はさらに大きくなってしまいます。
 そして、親が高齢であるほど、贈与といった相続税対策が限定されてしまいます。親があまり財産を有しておらず、相続税がほぼ課されないという場合以外には、可能であれば親が相続しない方が、相続税については有利になることが多いと思われます。ただし、親が相続放棄を行い、兄弟が相続人となる場合、通常の相続税の2割増しの負担になりますので、相続放棄を決断する前に試算を十分に行うことが重要です。自ら考えるのではなく、税理士等の専門家に相談する方が得策でしょう。
 相続発生後、相続人は相続するか否かを決断する必要があります。相続放棄を行うのであれば、相続開始があったことを知った日より3カ月以内に家庭裁判所に申し述べるのが原則です。相続放棄というのは相続人が相続する権利を放棄する方法であり、相続放棄を行うとその相続人は最初から相続人でなかったものとみなされます。同順位の相続人全てが放棄をすれば、次の順位の相続人が相続人となります。
 ご質問のケースでは、兄が独身ですので、相続人の判定上、妻及び第1順位の子がいないことから、第2順位の両親となります。しかし、父は死去していますので、母1人が相続人となります。この母が兄の財産を相続することを回避するためには、相続開始を知った日より3カ月以内に家庭裁判所に申し述べなければなりません。そうすることによって、母は最初から相続人でなかったものとみなされ、次の順位の兄弟であるご質問者が相続人となります。なお、相続開始を知った日より3カ月の熟慮期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、決定できないのであれば、家庭裁判所は申し立てによって、この3カ月の熟慮規間を伸長することが可能です。
 子供がいない兄が先に死去しても、親が相続放棄を行っていればご質問者が相続することが可能であることを知らなかったということ、また、相続放棄は延長していれば時間を稼ぐことができるのを知らずに焦ってしまったということが、問題です。

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